身体から湧き上がってきたような音に私は魅力を感じる。音と自分との距離がだんだん無くなって「これが私！」と言えるような音。「音が自分でもあり、自分が音でもある。」というのができたら、究極。憧れの演奏家たちはいつもそれが体現できていると思うし、たとえ子供であっても1度それを経験できれば手応えが得られるはずだ。

この前生徒さんの演奏を聴いていて、まだ音に命が吹き込まれていないなと思った。

どうやったら、血が通った音に辿り着くだろう。アプローチの仕方はいくつか思いつく。あとは、生徒さん本人と先生である私とで魔法が起こせるかどうか。

その魔法の材料の1つとして、才能を生かして欲しい。

世の中で、ある物事に才能があるかどうかについて、話題になることがある。

たしかに才能というものは存在する気がするが、その閃きは個人個人に備わり無限に広がっていて、好きになる才能だったり、目標を定められる才能、努力できる才能、研究できる才能、感動する才能、熱中する才能、美的な才能、音やリズムを感じられる才能、試してみる才能、続けられる才能、渇望する才能…枚挙に暇がないと思う。

植物でいえば芽みたいなもので、その才能たちを見つけ、美しい花を咲かせ、美味しい実をつけられるかどうかは本人と周り次第。

レッスンしていて、狙った音が出せた瞬間、生徒さんと先生の両者に何とも言えない充実感が広がる。どちらにもモヤモヤの残らない、「これだ！」という音。これからも、その瞬間を求めていきたい。

2019.02