テディ
テディというのは、私の最も尊敬するヴァイオリンの師匠のニックネームだ。目を閉じてニコっとする笑顔が最高にチャーミングで、茶色のチェックのジャケットが似合ってユーモアのある紳士。だが音楽のことでは妥協無しで、生徒が本質を分かって咀嚼するまで反復させて、できるまで辛抱強く待っていてくれる先生。
その先生のところで勉強したくて、大学を卒業してすぐに私はロンドンへ飛んだ。
10代後半で日本からヨーロッパへ移ってヴァイオリニストとして活躍してきた先生は、日本人としてのルーツを大切にしながらも、ヨーロッパに続く伝統のエッセンスを吸収して生活してきたオーラで輝いている。
レッスンで特に感慨深かった先生の言葉は「音楽を語るように、話すように演奏する」ということ。その言葉を与えられて、自分の音楽の方向性や、どんな演奏を目指したいかが、はっきりしたと思う。
名演奏家の録音についての知識も豊富で、ずいぶん紹介してもらった。例えば、ティボーとコルトーによるフランクのヴァイオリンソナタの3楽章の終わりのところ、音程がわざと低めなのが素晴らしい、とか。
久しぶりに先生と電話で話す機会があり、改めて先生の偉大さを感じた。
電話の最後には、先生お決まりの「プラクティス!(練習!)」という声。
夜だったが、慌てて練習した。
そのような先生の姿勢に、少しでも近付けたらなと思う。
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