クロイツェルソナタ

ベートーヴェンのクロイツェルソナタについて最近質問を受けることがあって、いろいろな音源を改めて聴いてみた。こりゃ、すごい曲ですね〜!

私にとっては、かっちりとした硬派な名曲というイメージだったこのソナタ。もちろん、正統派という認識はこれからも変わりは無いのだが、硬軟どちらの性格も併せ持つ、という面白さに今回気付いた。
そして、当時にしてみたら革新的なことだっただろうと予想できる曲展開の仕掛けをいろんな場所に作っている。

第9交響曲の4楽章の出だしの面白さ(1〜3楽章の主なメロディーを取り出して、この場面に相応しいのはあれでもないこれでもないと進む)、ヴァイオリン協奏曲の1楽章冒頭をティンパニーのソロで始める、とか、ベートーヴェンはただの真面目な堅物では無く、遊び心と新しい音を求めていく人だったんだろうなと今までも感じてはきたけれど、クロイツェルソナタでもやってくれているんですね。そこが今回の発見。

ベートーヴェンの後に生まれる(クラシックに限らない)音楽の源泉になったんじゃないかと思えるような拍子をわざと変えて崩す場面や、3楽章の出だしをいきなりジャーンと和音1種類にするとか、何だかすごい。

2楽章でのバリエーション展開でヴァイオリンが奏でるメロディーは、まるで絶世の美人をずっと眺めているような、正統派の美しさ。ただテーマ展開を機械的にしている訳ではなく、ベートーヴェンが美しいメロディーの作り手であった事がよく分かる。最初の方のバリエーションで、運命(第5交響曲)のモチーフと同じところがあって、同じ音が3〜4音続くシンプルな美しさが光っています。ここは奏者の味付け方や個性がよく出るところ。

私のおすすめ音源は、スーク(Violin)&パネンカ(Piano)の演奏です。1楽章の冒頭、パネンカの演奏が少し控えめに聴こえるけれど、音量をいつもより上げて聴くと、細かいニュアンスが聴こえてきて、バランス良く味わえます。
そして、スークが蘇ってくれるなら、スークの美音、ぜひ生でも聴いてみたい。あまりの美しさに、しびれます。

リリー音楽教室

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