シゲティのラヴェル
ヨーゼフ・シゲティの奏でるヴァイオリンの素晴らしさは、ずいぶんと前から実感していたつもりだが、今回改めてシゲティの繰り広げる世界にぞっこん惚れた。
後世に残してくれたシゲティの録音の中で今回取り上げる曲は、ラヴェルが作曲した「ヴァイオリンとピアノのためのソナタト長調(第2番と呼ばれることもある)」である。
最近ちょっとしたきっかけで、ラヴェルのソナタの名録音について本腰を入れて探してみようと思い立ち、たどり着いたのがシゲティ によるラヴェルだった。これで共演しているカルロ・ブゾッティのピアノも見事だ。曲の特徴を存分に活かした、2人による対話のようなメロディーのやり取りが爽快である。
1楽章の冒頭のピアノソロ、まず透明感のある音色に癒される。そして追いかけるように出てくるヴァイオリンのメロディー。
クライマックスへ向かって、音がぶつかり重なって調和が崩れるかどうかギリギリの危うい美しさが展開され、そこを乗り越えた後の協和音のきれいな響き。シャリ感のあるシゲティの美音が味わえます。
2楽章のブルース、まずヴァイオリンのピチカートがかっこいい。やがて始まる柔らかい絹のような手触りのメロディー。まるで、声色を自在に操る歌手のようです。夕暮れのような、光と闇が入り混じる味わい深さ。
3楽章は、絶妙。弓の飛ばし方からか、ジェットコースターに乗った時のようなワクワクドキドキ感がずっと続く。速くソツなく弾くというのを目指した演奏では無く、聴く側にも手に汗を握るような経験をさせてくれる演奏。これは、シゲティの狙い通りだと思う。録音なのに聴衆も参加させることができるなんて、なかなかできることじゃありません。
シゲティの爪の垢を煎じて飲ませていただきとうございます。また私の宝物が増えた。
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